農林中央金庫では現在、『食農ビジネス』を通じた地方創生、地域活性化に取り組んでいます。営業第三部に所属する竹野翔一も、JR東海様と協働でオンラインショップ『いいもの探訪』を企画、運営。同サービスは、JR東海様の沿線地域にある逸品や名産品を紹介することで土地の魅力を伝え、同時にその商品を実際に購入できるというもの。JAグループのネットワークをフル活用し、さらなる商品拡充、知名度向上を目指しています。
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農林中央金庫では、金融機関としての本業である融資や出資、ソリューション提供だけでなく、『食農ビジネス』と銘打って、地方創生や地域活性化にも取り組んでいます。それは、なぜなのでしょうか。竹野は次のように解説します。
「地方で急速に進む人口減少と、それに伴う過疎化、高齢化は、農林水産業の衰退を招いてしまいます。逆に、地方や地域を元気にすることができれば、農林水産業を盛り立てていくことにもつながります。私たちが『食農ビジネス』の名で進めている一連の取り組みは、従来の法人営業などに見られる銀行員のイメージとは異なるかもしれません。しかし、農林水産業の発展を目的としている私たちにすれば、融資も出資も手段のひとつに過ぎないのです。実はここに、私たちの仕事の面白さがあります」
農林中央金庫は、農林水産業と取引企業とをつなぎ、新しいビジネスを仕掛けています。そこで生まれるキャッシュフローは、農林水産業と取引先に利益をもたらし、地域経済を活性化させます。だから各職員も、組織の利益、自身の営業実績にすぐに直結しなくても、「生産者の所得を向上させ、農林水産業を盛り立てていこう!」という強い使命感のもと、実にやりがいを持って仕事をしています。また、組織としてもそんな試みやチャレンジを積極的に評価しているだけに、皆のモチベーションは高いようです。
現在、大小さまざまな『食農ビジネス』が全国各地で展開されていますが、その代表例のひとつが、竹野がJR東海様と協働で進めているオンラインショップ『いいもの探訪』。事の始まりについて、竹野は次のように話してくれました。
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「営業部に異動して半年が過ぎた2017年頃ですね。地域活性化の観点からもJA系統とのシンパシーを感じていたこともあって、JR東海様に何か一緒にできないかと申し入れてみたんです。すると『いいもの探訪』というWEBサイトの話題に上がって。聞いてみると、2015年に管内各地の魅力を伝える情報発信サイトとして立ち上げたものの、サイトを訪れた人たちから、『紹介されている品々を買えるようにして欲しい』という声が多数寄せられたんだそうです。『そんな経緯で2016年秋にECサイトに切り替えたばかりだから、ぜひ一緒にやりましょう』という話になり、その企画、運営に関わらせていただくことになりました」
そこで竹野は、「商品ラインアップの拡充」と「知名度向上・売上拡大」という、2段構えでアプローチ。まず「商品ラインアップの拡充」について言えば、JA系統では県の信用事業連合会である信連が、地域に根ざす金融機関としてさまざまな生産者・加工業者とリレーションを持っていることに着目。そのリレーションを活用し、JR東海様管内における各県の信連と、JR東海様の担当部門との情報共有を企画しました。具体的には、JR東海様のバイヤーの方々に、信連の担当者たちが地元の商品をアピールする「プレゼン大会」を定期的に開催。そして『いいもの探訪』で紹介するに相応しい、ご当地の農産品を用いた加工品などを中心に、皆で議論を重ねながら選別。こうしてオンラインショップとしてのブランディングを図りながら、商品ラインアップの拡充を進めていきました。
他方、「知名度向上・売上拡大」について言えば、農林中央金庫のネットワークをフル活用。たとえば、大手町エリアの開発を手掛けるデベロッパーに働き掛け、平日に開催されるマルシェに参加し、オフィスワーカーたちにアピール。また、JR東海管内に本支社を構える農林中央金庫の取引先に対し、商談や出張時のご当地土産として購入してもらえるよう社内販売を推進するなど、地道なローラー作戦を展開していきました。
「また、オンラインショップ『いいもの探訪』がリアル店舗に出店したジェイアール名古屋タカシマヤ様での「いいもの探訪フェア」では、連携協定を結ぶ企業様とタイアップし、JAのフルーツを使ったパフェも開発しました。まさか金融機関に勤務した自分が、パフェ開発に関わるとは夢にも思いませんでしたが(笑)、使用するフルーツを裏方として手配しました。幸いにも、そこで生まれた交流がキッカケとなって、スイーツに使われるような旬のフルーツも、『いいもの探訪』でタイムリーに販売できるようになりました」
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足掛け4年。本件において関わった人の数は社内外で100名以上にのぼり、竹野は多いときには週2回のペースで名古屋や静岡などに出張を重ねたそうです。その甲斐あって、現在では商品ラインアップ数も当初の3倍に増え、『いいもの探訪』の知名度はもとより、扱う逸品、名産品の認知度も向上しました。さらに今日ではジェイアール東海バス様が、オンラインショップの出品者である生産者先を訪れる体験ツアーを企画しており、家族連れなどを中心に大盛況。情報発信を通じて全国各地のお客様をご当地へと誘導し、コト消費を通じて地域活性につなげていくという、『いいもの探訪』が当初から掲げてきた目的が、着実に果たされてきました。でも、竹野も、そしてJR東海様も、さらにその先を見据えているようです。
「私たちの間でよく話題にのぼるのが、鉄道事業も農林水産業も『その土地から逃れられない産業』であるということ。もちろん、農林中央金庫も一蓮托生ですね。そうした立場で地方創生や地域活性化を考えると、やはりその土地を訪れる人を増やすだけでは実は不十分で。目指すべきは、その土地に『暮らす人』を増やすことであり、このことに中長期的に取り組むことなんです。人が分散して各地方に暮らし、それでいて不便を感じることなく、都市部と同等の生活水準も維持される——。そうした状況を作り出せてはじめて、地方創生や地域活性化が真の意味で実現されると、私たちは考えています」
この点で『いいもの探訪』は、地域にお金が届く流れが作れたと言えます。実際に売上も拡大傾向にあることから、着実に生産者や加工業者の所得向上も実現されています。金額こそまだ小さいですが、未来に向けた大きな一歩が踏み出せたとも言えるでしょう。それだけに今後は、消費者に寄り添ったオンラインショップであると同時に、生産者にももっと食い込んだ取り組みをどんどん推し進めていきたいと、竹野は話します。とりわけJR東海様は、地域を盛り上げる同じ使命を持ったパートナー。地域活性化に大きな影響を与えていけるような取り組みができるはずであり、そのためのアイデアもまだまだあるようです。
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『食農ビジネス』に取り組む竹野たち営業担当者は、少なからぬ手応えを感じているそうです。それは近年、日本を代表するような企業がおしなべて、農林水産業に強い関心を持っているからです。この国が量的成長から質的成長へとシフトしていくなかで、今後のカギを握るのが農林水産業であると、各企業も思考しているのです。
「農林水産業とは結局、国力なのだと思います。グローバル化が進み、世界各地の非連続な変化が、一瞬にして世界中に影響を与えていくような時代にあって、国民が安心して経済活動にコミットできる環境を生み出せるのは、農林水産業の発展をおいて他にはないと思うのです。安定的に食料を供給し、手入れの行き届いた美しい国土を維持する。農林水産業が『第一次』に位置付けられている所以でもあります。日本社会に大きな影響力を持つ企業がそのことに再注目し、農林中央金庫の背後に広がるJA・JF系統をはじめとするネットワークに強い期待感を寄せているという事実や気運を、私たちは何としても形にしていきたいですし、それは今のうちにやらなければいけないことだと思っています」
国際的にも先例のない課題を多く抱えることから、日本は「課題先進国」だと言われています。そのなかで第一次産業の成長産業化は、課題を解決するうえで大きなインパクトを秘めるとして、近年は異業種からの参入も増えています。そうした取り組みを、ささえ、つなぎ、ひろげることは、農林水産業と取引先との双方に大きなネットワークを有する、農林中央金庫の使命であり責務でもあります。同時にそれは、農林中央金庫が有する権利であり、大きな可能性でもあるのです。
PROFILE
PROJECT STORY
INDEX
農林中央金庫だからできる、
地方創生・地域活性化への取り組み。
投資信託ビジネスの再開を通じ、
組合員の将来に寄り添うJAバンクへ。
洋上風力発電へのプロジェクトファイナンス。
地球規模で人々の生活を支えていく。
ESG投融資を推し進め、
SDGs課題への取り組みを世界に働きかける。
貸出強化支援プログラムの導入により、
JAの「持続可能な収益基盤」を構築する。
新型コロナウイルス感染拡大を経て、
再確認した系統組織の存在意義と底力。
不動産ソリューション機能の拡充を通じて、
お客様のファーストコールバンクを目指す。
年齢やITリテラシーによらず、
誰もが安心して使えるシンプルなアプリ。