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新たな業務領域の拡大に向けた取り組み
- 吉田
- 私たちが入庫してからの歳月を振り返っても、農林中央金庫が組織としてどんどん変わっているのを感じます。私の部署では、不動産業界を担当する営業部門として、従来は大手デベロッパーをはじめとしたお客様企業そのものに対する融資が基本でしたが、今はお客様が手掛ける開発案件に対しても融資できないか検討を重ね、いろいろチャレンジしています。とりわけ都市部では大規模再開発があちこちで計画、実行されているため、私たちも資金対応を検討するのですが、土地計画が途中で頓挫、縮小するという可能性も少なくなく、どのようにリスクヘッジし、収益を上げていくか、事あるごとに部署内で侃々諤々の議論を重ねています。最近はそうした議論も実像を結び始めてきており、「新たな業務領域の拡大」に向けた取り組みは、日増しに熱を帯びています。
- 遠藤
- そのような動き、気運は、私たち投資部門でも高まっていますね。現に私が所属するプロジェクトファイナンス部自体、そんな動きのなかから2015年に誕生した、比較的新しい部署でもあります。もともと農林中央金庫は日本最大規模の機関投資家として世界でも知られた存在ですが、その運用においては伝統的な株式や債券への投資、あるいはファンドを介した投資などが中心でした。しかし、これらは市場で価格が決まる商品であるため、マーケット環境によって価格が変動します。そこで市場環境のブレにも対応できるような新しい収益源、柱を育てようということで、プロジェクトファイナンスに進出することになったという経緯があります。
- 吉田
- プロジェクトファイナンスについては、私たちの前職のメガバンクは、すでに世界の主要プレイヤーとして認知されていますが、農林中央金庫がこの分野で後発なのは、やはり相対的に人員数が理由ですか?
- 遠藤
- そのとおりだと思います。農林中央金庫は職員の数において、メガバンクと比べれば圧倒的に少ないですからね。結果、少人数で効率的な資産運用をするとなると、仕込みに手間と時間がかかるプロジェクトファイナンスは非効率となってしまいます。それでも吉田さんが指摘した「新たな業務領域の拡大」は、投資部門においても喫緊の課題として捉えられてきましたし、そのひとつの解としてプロジェクトファイナンスにも本腰を入れるようになりました。こうした経緯もあり、それこそ最初はメガバンクが受注した案件に関して、その一部の融資を分けてもらう参加形式からのスタートでしたが、ようやく当部署にも知見、ノウハウが蓄えられて、今日では日本の総合商社のほか、海外の電力会社やゼネコン、外国政府機関など、国家プロジェクトの事業者、その主体から直接、案件を獲得できるまでになりました。
- 吉田
- 私たちの部署も、開発案件に対する融資は緒に就いたばかりですが、それでも単に融資するだけでなく、プロジェクトのコンテンツにまで入り込んだ案件も少しずつ増えてきました。これは遠藤さんたちの部署も同じ考えかと思いますが、業務領域を拡大するにしても、やはりメガバンクとの差別化をどう図っていくかが重要です。そこで私も街づくり、街を活性化させる仕組みづくりの部分で、お客様のお手伝いをさせていただくべく、現在はJAのネットワークを活用した「マルシェ」を企画、実行したりしています。