農林中央金庫

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総合職対談

日本の農林水産業の発展のために、
新たな発想で取り組みを進める。

吉田 征令MASANORI YOSHIDA
営業第二部 2012年入庫/経済学部卒

2008年に銀行に入行し、1か店目で中堅・中小企業向け融資を担当、2か店目では業績不振先向け債権回収や金融円滑化対応を担う。2012年、農林中央金庫に入庫。熊本支店で水産関係者向け融資を、続く札幌支店で農業関係者向け融資を担当した後、2018年より現部署。現在は、デベロッパー・REIT向け融資を担当する。

遠藤 茂紀SHIGENORI ENDO
プロジェクトファイナンス部 2011年入庫/政治経済学部卒

2006年に銀行に入行し、1か店目で売上高5億円〜50億円程度の事業法人を担当。続く2か店目で上場先を含む売上高50億円〜1,000億円程度の事業法人を担当。2011年、農林中央金庫に入庫。福岡支店にて農業貸出を担い、主に畜産農家の経営改善計画の策定などに従事。その後、開発投資部を経て、2015年7月より現部署。

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新たな業務領域の拡大に向けた取り組み

吉田
私たちが入庫してからの歳月を振り返っても、農林中央金庫が組織としてどんどん変わっているのを感じます。私の部署では、不動産業界を担当する営業部門として、従来は大手デベロッパーをはじめとしたお客様企業そのものに対する融資が基本でしたが、今はお客様が手掛ける開発案件に対しても融資できないか検討を重ね、いろいろチャレンジしています。とりわけ都市部では大規模再開発があちこちで計画、実行されているため、私たちも資金対応を検討するのですが、土地計画が途中で頓挫、縮小するという可能性も少なくなく、どのようにリスクヘッジし、収益を上げていくか、事あるごとに部署内で侃々諤々の議論を重ねています。最近はそうした議論も実像を結び始めてきており、「新たな業務領域の拡大」に向けた取り組みは、日増しに熱を帯びています。
遠藤
そのような動き、気運は、私たち投資部門でも高まっていますね。現に私が所属するプロジェクトファイナンス部自体、そんな動きのなかから2015年に誕生した、比較的新しい部署でもあります。もともと農林中央金庫は日本最大規模の機関投資家として世界でも知られた存在ですが、その運用においては伝統的な株式や債券への投資、あるいはファンドを介した投資などが中心でした。しかし、これらは市場で価格が決まる商品であるため、マーケット環境によって価格が変動します。そこで市場環境のブレにも対応できるような新しい収益源、柱を育てようということで、プロジェクトファイナンスに進出することになったという経緯があります。
吉田
プロジェクトファイナンスについては、私たちの前職のメガバンクは、すでに世界の主要プレイヤーとして認知されていますが、農林中央金庫がこの分野で後発なのは、やはり相対的に人員数が理由ですか?
遠藤
そのとおりだと思います。農林中央金庫は職員の数において、メガバンクと比べれば圧倒的に少ないですからね。結果、少人数で効率的な資産運用をするとなると、仕込みに手間と時間がかかるプロジェクトファイナンスは非効率となってしまいます。それでも吉田さんが指摘した「新たな業務領域の拡大」は、投資部門においても喫緊の課題として捉えられてきましたし、そのひとつの解としてプロジェクトファイナンスにも本腰を入れるようになりました。こうした経緯もあり、それこそ最初はメガバンクが受注した案件に関して、その一部の融資を分けてもらう参加形式からのスタートでしたが、ようやく当部署にも知見、ノウハウが蓄えられて、今日では日本の総合商社のほか、海外の電力会社やゼネコン、外国政府機関など、国家プロジェクトの事業者、その主体から直接、案件を獲得できるまでになりました。
吉田
私たちの部署も、開発案件に対する融資は緒に就いたばかりですが、それでも単に融資するだけでなく、プロジェクトのコンテンツにまで入り込んだ案件も少しずつ増えてきました。これは遠藤さんたちの部署も同じ考えかと思いますが、業務領域を拡大するにしても、やはりメガバンクとの差別化をどう図っていくかが重要です。そこで私も街づくり、街を活性化させる仕組みづくりの部分で、お客様のお手伝いをさせていただくべく、現在はJAのネットワークを活用した「マルシェ」を企画、実行したりしています。
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長期的なリレーションを前提とした
ビジネス

遠藤
吉田さんの取り組みは興味深いですね。都心の大規模な再開発に加え、郊外の住宅エリアでも駅前再開発を中心とした街づくりが進行しています。私は専門家ではありませんが、昔のようにハードを整備すればそれで事足りる、という時代でないことはわかります。街を活性化させる仕掛けがないと、街は機能していきませんものね。
吉田
日本は人口が減少する一方、都市部の再開発は大規模化しています。それは都市に人口が集中するなかで、オフィス環境、住環境をどうすればいいのか、お客様である各デベロッパーが真剣に考えていることの表れでもあります。たとえば都心のビル開発においては、従来の1フロア100人ではなく、2フロア50人ずつとすることでフリースペースを多く設けるような、そんな開発が増えています。雇用が流動化するなかで、優秀な人材を確保し、長く勤めてもらいたいというニーズがその背後にありますが、快適なオフィス環境の追求は、もはやビルのみならず周辺環境、街づくりにまで及んでいます。同様に郊外の住宅エリアでも、コンパクトシティという発想のもとでの街づくりが進められており、中心市街地をいかに活性化させるか、その仕組みが重要視されています。こうしたスケール感のなかで「マルシェ」を語ると、一コンテンツに過ぎず、小さな取り組みになってしまうのですが、それでも私は意味があると考えています。
遠藤
私たちがこだわるべきは、第一次産業の発展と地域の繁栄ですからね。
吉田
そうですね。私としては開発者、居住者、そして生産者の3者が、皆がうれしい、皆が喜ぶビジネスモデルを描いていきたいと思っています。都市の再開発であっても、地方、地域が豊かになる内容に導いていきたいと考えています。実は今、「マルシェ」と連動する形で、物流においても試験的な取り組みを進めています。それは都市と地方とを結ぶ高速バスを利用した農産物の輸送です。バスの運行会社はダイヤを組み、そのダイヤに従い高速バスを運行していますが、そのバスで朝獲れた農産物の輸送をできないかと考えました。既往のインフラを利用するのでわれわれ開発サイドは設備投資が不要ですし、運行会社にしても損にはなりません。このような取り組みはまだ小さいですが、自分がこうしたビジネスマッチングの窓口となりながら、一連の輪を拡大させることで活気ある街づくりに寄与し、その街に関係するすべての人の利益、満足を追求できるような仕組みづくりを、今後もいろいろと考えていきたいと思っています。
遠藤
吉田さんたちの取り組みは、われわれのプロジェクトファイナンスとも一脈相通ずるところがありますし、お話をうかがっていると改めて農林中央金庫の強み、可能性を感じますよね。私はこれまで10か国以上に出張し、中東での大規模太陽光発電所、南米での海水淡水化施設、欧州での洋上風力発電所、世界各地のエアライン、リース会社向け航空機ファイナンスなどに関わってきましたが、これら案件は10〜20年という長期的な観点での投資となっており、この点でわれわれはお客様との親和性が非常に高いと感じてきました。農林中央金庫は、JAなどの系統金融機関へ長期安定的に収益を還元することを最大のミッションとしてきただけに、長期的なリレーションを前提としたビジネスが得意であり、枠をたくさん獲得して、そのうちの半分くらいを他の銀行や投資家に売って手数料を取り、短期的な収益を上げていくというのが一般的なビジネスモデルであるメガバンクとは違うビジネスモデルを描けるんですよね。
吉田
同感です。農林中央金庫は中長期的な安定したリターンを出資者である組合員から求められていますので、われわれ担当レベルも長期的展望に立ち、腰を据えてお客様と向き合えます。
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逃げも隠れもできない金融機関

遠藤
長期展望に立ったビジネス、長き道のりを伴走者としてともに歩む姿勢は、少なからずお客様の心に刺さり、信頼され、われわれの競争力の源泉となっていますよね。そして実は、こうしたスタンスで仕事をしたいと考えたことが、私の転職理由でもあります。メガバンクは株式会社ですから、短期的に収益を上げることを株主からも求められています。必然的に組織としても半期ごとの数字が大事となり、それが自身の評価にもダイレクトに関係します。こうなると数字を上げることに夢中になってしまい、「同期や先輩にどうやったら勝てるか」ということに興味を奪われ、ともすればお客様が遠くなってしまうんですよね。
吉田
メガバンクから農林中央金庫に転職してきた人の多くが、そこを指摘しますよね。かくいう私も、前職の2か店目では業績が悪化しているお客様を主に担当したのですが、自分たちがメインバンクでない場合、できることにも限りがあり、結局は回収と、従来の関係をスマートに解消するという、後ろ向きな仕事になってしまいました。自分としては、金融面でもう少し支援ができるような業務をしたかったし、もっと言えば業績不振に至る前に改善策を提示できるような業務を行いたかったのですが、短期的に収益を上げることが求められる以上、それは現実的ではありませんでした。
遠藤
その点、農林中央金庫は「日本の農林水産業の発展に資する」という存在意義が明確なだけに、お客様と深く関わり、社会貢献度の高い仕事ができるのではないかと期待して私も入庫をしたわけですが、実際は自分の期待をはるかに上回っていました。
吉田
裏を返せば、逃げも隠れもできない金融機関とも言えます。私は最初、熊本支店に配属され、水産関係者向けの融資を担当したのですが、海の中の生け簀に「稚魚が3万匹泳いでいる」と言われても、実際に3万匹いるのか確認することはできませんし、「出荷までに2〜3年かかる」と言われても、その過程で死滅する可能性もあるだけに、当初はこうした事業者に対して融資することも疑問でした。ところがあるとき、他の金融機関から融資を止められたお客様の事業が瞬く間に衰退し、地域の活力までみるみる失われていく光景を目の当たりにしたときは、慄然としました。以来、「収益をいくら稼ぐ」よりも「お客様のために何ができるか」を、徹底して考えるようになりました。
遠藤
私も当初、福岡支店に配属され、畜産農家を担当しましたが、当時は輸入肉に押されてジリ貧状態でした。そこで生産者をはじめ、獣医、飼料メーカー、JAの指導員などが公民館に集まっては、和牛の文化を消失させまいと何度も膝詰めで話し合いましたが、「簡単な気持ちではできない仕事だな」と思ったのを昨日のことのように覚えています。でも、私はこのとき、農林中央金庫の職員としての矜持をハッキリと感じることができました。
吉田
さっき遠藤さん、農林中央金庫は長期的なリレーションを前提としたビジネスが得意だとおっしゃったでしょう? 本当にその通りだなと思うのは、私たち総合職には異動があるなかで、農林中央金庫では案件の詳細だけでなく、そこに関わるすべての人たちの歴史が、前任者から後任者へときちんと引き継がれ、積み上げられています。だからどの担当者も、仮にお客様から「お前なんか、どうせすぐいなくなるんだろう!」と言われたとしても、ひるまないんですよね。自分がひるんだら前任者にも後任者に申し訳が立たないし、そもそも自分たちが強い覚悟、信念を持って臨まないかぎり、地域に何かを働き掛けるなんてできないですものね。だから私も本気で仕事に向き合いましたし、誇りをもって働くことができました。それだけに支店時代のお客様とは今でも連絡を取り合う仲で、こうした人との出会いや関係は、私たちの生涯の財産ですよね。
遠藤
本当ですね。メガバンクの支店勤務もいい思い出はたくさんありますが、農林中央金庫の支店勤務は、一次産業従事者や農協、漁協といった関係団体とのお付き合いの度合いが深い分、思い出の濃さが違うんですよね。それだけに私が所属する投資部門も、業務内容的には一次産業と直接的な接点はないものの、支店勤務を経験した人たちは、そこで農林中央金庫の原点をマインドセットされているだけに、「この投資で儲けて、一次産業に還元していくんだ」という思いを強く持っています。そして、そんな思いが強い分、それが働くうえでの大きなモチベーションになっていることは間違いないですね。
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部門の垣根を越えた発想と行動

吉田
モチベーションという点では、担当レベルの業務範囲が広く、それに伴い裁量も大きいことが、私の働く動機付けとなっています。前職は人数も多い分、役割分担も明確でしたが、農林中央金庫では単純な案件業務だけでなく、企画業務を行うことが多い点は、メガバンクと大きく異なる部分だと感じています。
遠藤
たしかに担当レベルであっても、新しいアイデアを積極的に発信することがつねに求められますし、少数精鋭体制であることから意思決定のスピードも非常に速いので、企画業務を行うにしても手応えが感じられて痛快ですよね。加えてチャレンジ精神旺盛で、新しい分野に果敢に挑戦しようという風土があるので、組織として解決すべき課題や克服すべきウィークポイントも少なからずありますが、とにかく前向きに仕事をしていこうという気概に満ちていることは、農林中央金庫の誇るべき長所だと思います。
吉田
こうした環境に身を置いていると、融資するか否かというような単純な話ではなくて、「どのような取り組みを行えば、お客様にとってよりよい経営が目指せるのか、ひいては社会や未来に貢献できるのか」ということを、深く考えるようになります。だから私も、「不動産であれば吉田がいるぞ」と言ってもらえるくらいには知識を高めていきたいと素直に思いますし、今も不動産証券化協会認定マスターの資格取得をひとつ目標にしています。当然、その過程で獲得した知識は現業務に生きますし、仮に遠藤さんの部署に異動したとしても活用できるはずです。結局、われわれ農林中央金庫の総合職というのは、ひとつ部門でスペシャリストを志向するにせよ、異動しながら自身のキャリアの幅を広げるにせよ、一次産業従事者および関係団体を多面的に支援できる人材を目指すべきだと思います。そして日本の農林水産業を発展させるためのさまざまなルートを、仲間の力も借りながら自らが開拓し、そのコンダクター、旗振り役となるべきだと思うのです。少なくとも私はそう考えていますし、そういう人材になりたいと思っています。
遠藤
そうですね。他業種の参入などにより金融業、金融機関のあり方が大きく変わろうとしているなかで、われわれも各部門がクロスオーバーしながら、必要に応じて組織体制も更新し、農林中央金庫というチーム力で新しい事業をどんどん仕掛けていくべきだと考えます。たとえば、今も食農部門がバリューチェーンの拡大などを目的として、アジアの非日系企業へ融資を始めましたが、実はこれも非日系企業との融資取引という観点から私が担当している航空機ファイナンスのノウハウが転用できると考えます。その相手が不動産関連企業であれば、吉田さんたちの知見が生きることも容易に想像がつきます。結局のところ、吉田さんが指摘されたように農林中央金庫の総合職は、自らに課せられた役割を全うしつつも、つねに部門の垣根を越えた発想と行動が求められていると思うのです。ですから私も現部署においては、投資をして収益を上げることに終始するのではなく、海外を主戦場に築いたリレーションの先に何ができるのかをつねに探っています。日本の農林水産業の発展に資する突破口を絶えず模索し、新たなビジネスモデルをグローバルに描ける、そんなビジネスパーソンへと成長していきたいと考えています。