RETAIL BUSINESS
梅林 恒
KOU UMEBAYASHI
長崎支店
2018年入庫/法学部卒
PROFILE
自分自身を武器にできるやりがいのある仕事がしたいと考え、金融業界を志望。なかでも唯一無二の使命を有する農林中央金庫に惹かれた。入庫後はIT統括部で契約事務、予算統制、農中情報システムへの出向を経験。その後、高松支店で食農ビジネスの貸出業務に従事し、2024年より長崎支店にてリテールビジネスの推進業務を担当している。趣味は海外サッカーと野球の観戦。最近は頭脳スポーツであるカードゲームの面白さにも魅了されている。
長崎支店の推進総括班で、推進企画を担当しています。具体的には、JAバンクの全国施策を県内に展開していくための方法や、貯金・年金・カード・ローンといったJAバンクの各種金融商品とサービスに県独自のアレンジを加えて提供するための企画を行っています。
JAバンク長崎とそれを構成する県下7JAの経営をより良い方向へ導いていけるよう、県域の情勢や実情に即した企画立案に日々頭を使っていますが、各種の企画は最終的には地域の人々の暮らしに還元されるものであるため、広義では「長崎の未来が明るくなること」がミッションだと認識しています。
これは当県固有の事情だと思いますが、長崎県のJAにはお客様である組合員や利用者のところへ直接出向いて商品提案をする、渉外担当者が存在しません。渉外担当がいないなかで、どうやって実績を上げていくかといえば、窓口担当の方々にやっていただくしかありませんので、少ない人数でも効果的・効率的に数字を伸ばしていける金融商品を選択し、集中的にリソースを投下する、「選択と集中」が非常に重要になってきます。
この観点から力を入れていることの一つが、年金口座の獲得です。年金は個人貯金のなかでもアプローチの効果が比較的出やすい領域のため、我々からJAに潜在顧客のリストを提供するとともに、推進資材としてお客様へのプレゼント企画を用意しています。さらに、JA職員がお客様にどの程度までご案内できたかを確認するための管理ツールを作成し、そのPDCAを回すことにより、施策自体のブラッシュアップも図りながら、職員の皆さんの提案スキル向上と業績アップを支援しています。
また、長崎県は五島や壱岐、対馬などの離島が多く、人が移動することについてのハードルが高いという特徴もあります。この点を考慮し、積極的に活用すべきと考えているのが非対面チャネルです。特に若い世代ではインターネットでの申し込みが普及していますので、マイカーローンを中心とした小口ローンの推進に関しては、非対面チャネルの拡大を目指して、県域を対象としたJAバンクのWeb CM投下に予算を割いています。ここでは当然、PR効果の高い媒体を選択することが重要になってきます。そこでYouTubeやTVerなどのメディアごとに放映後の効果測定を行って媒体を絞り込み、CMからホームページへのリンクにも工夫することで、JA職員が手をかけずとも実績を伸ばせる手法の確立を目指しています。
来年度から次の中期戦略期間がスタートしますので、その旗振り役である私も、現在はJAバンク長崎の次期中期戦略策定に向けた業務がかなりの割合を占めています。
中期戦略には、全国のJAグループ全体として取り組む項目と、県域のJAがそれぞれの地域特性に合わせて濃淡をつけながら推進していく項目があり、後者にあたるJAバンク長崎の戦略目標を取りまとめるのが我々の役割となっています。
ただし、日ごろから各JAの経営に入り込んだ推進支援をしている身としては、県段階の戦略にとどまらず、各JAの目標策定もサポートしていくべきと考え、JAの役職員と議論しながら共に作業を進めています。
戦略目標は、単なる過去の数字の延長線であってはいけないと思いますし、本気で追っていけないような内容であってもならないと考えています。ですからJAにはまず、定量・定性の両面から、将来どうなりたいかを検討してもらいたい。中期戦略の対象期間は3年ですが、JAの経営は3年後がゴールではありませんので、もう少し先を見て、5年後、10年後のありたい姿を想像し、そこから逆算的に、次の3年間でどこを目指すのか、そのために来年は何をすべきかを、数値目標と体制整備の両面から考えてほしいと依頼しています。
戦略の策定で難しいと思うのは、年金やローンを伸ばしていくような「攻め」だけでなく、財務状況等を踏まえて時にはブレーキをかけていく「守り」の観点も重要であるということ。そのためJAには、経営資源も勘案し根拠のある数字を算出してもらえるよう、そのポイントなどを説明し、対話を重ねている最中です。
JAの役職員と顔を突き合わせ、率直な会話を重ねている今回の戦略策定は、相互に理解を深めるうえで非常に有意義な機会になっていると思いますし、議論のなかでJAから出た要望に関しては、しっかりと本店の所管部へつなぎ、その実現を支援していかなければならないと考えています。
ひと言でいえば「巻き込み力」ですね。我々推進企画担当の仕事はこれまで、「JAの人を動かす仕事」と形容されてきました。ですが自分としては、動かす相手はそれよりもずっと幅広く、農林中央金庫の中の人などもその対象に入ると思っています。たとえば、JAの役員に話を持っていく時は、自分が直接ぶつけるのではなく、金庫の支店長や副支店長に頼むなど。偉そうに聞こえるかもしれませんが、上司をうまく使うという人の動かし方も大事ですし、同僚や他班のメンバー、さらには関係機関の人々を巻き込んで、彼らを介し、JAに動いてもらうことも大事だと考えています。
無論、頓珍漢なことを言っていたのでは動いてもらえませんし、反発も出てきますから、ロジカルな思考や入念な事前準備、何を見据えているのかという目的を明確にしたうえで相手を納得させる説得力といったものが不可欠で、そうした素養をひと言で表すと「巻き込み力」という言葉になるのではないかな、と。
周囲を巻き込みながらの仕事は、高松支店にいた頃もよくやっていましたが、その当時と比べても現在の推進業務は関係者が圧倒的に多いので、これからも失敗しながら学んでいくことになるのだろうと思います。
高松支店では食農ビジネスに従事しており、担当していた取引先の一つに当庫がメインバンクとなっている農業法人がありました。肉用鶏関係の事業を営むそのお客様は、農業法人としては全国でもトップクラスの規模を誇っており、当庫との関係性も極めて密だったため、私も取引先のもとへ通い詰め、財務部長の右腕となって働きました。具体的には事業規模の拡大を志向する取引先の方針を踏まえ、資金計画を策定したり、メインバンクとして取引先を支える銀行団の形成に向けた協議をしたり、時には過度な事業拡大にブレーキをかける役割を果たしたり、まさにバンカー冥利に尽きる経験でした。
飼料価格高騰の折、いかにして利益水準を保ちながら事業展開していくかの計画は、財務部長と絶えず擦り合わせしていました。会社のガバナンスを強化するために、税理士・社労士を巻き込んで規定を作ったこともあります。高松支店にいた3年間、まさに取引先の一員になった感覚で経営に深く入り込んだ仕事をするなかで、自信を持てる領域ができたのは大きな収穫だったと思います。
高松支店では今お話しした取引先とは別に、地元の企業とJAのマッチング案件に携わったことがあり、その際にJAに関する知識と折衝スキルが不足していると感じたことが、現職への異動を希望した理由でした。そのため、いずれは食農のフィールドに戻り、リテールビジネスでの学びを活かした活躍がしたいと考えています。地域においてはJAと地元有力企業との協業案件を、全国レベルではJA全農等と大手企業の連携を橋渡しすることで、地方創生や新規事業の創発に尽力していきたいですね。
一方で現職のリテールビジネスは、食農ビジネスの担当者が行っている営業を、JA職員にやってもらうこと。私も高松支店での営業経験がなければ、顧客対応の最前線に立つ者のモチベーションがわからず、今以上に施策立案に苦慮したでしょう。リテールビジネスと食農ビジネスの両方を経験しておくことは、将来どちらのフィールドを専門にするにせよ、決して無駄にはならないと言い切れます。
私をはじめとした農林中央金庫の職員だけでなく、多くの社会人は、入庫(入社)前に抱いていたイメージや想いをそのまま保った状態で、働き続けているわけではないと思います。これは悲観的なことではなく、想像以上に多くのモノに触れ、多くの方々と働くことで、仕事に対するイメージや考え方は変化するものだからです。プライベートで家族ができることで、考え方が変わる人もいるでしょう。
そのため就職活動を行う際は、短期的な見地で「こんな仕事がしたい」というイメージを持つのではなく、「自分が本当に大事にしている価値観は何か」を見つめ、軸にしていってほしいと思っています。
私の場合の軸は、「やりがいを持てること」でした。そして、これまでのキャリアでいうと、高松支店時代は「支店収益への貢献」や「四国の農業の発展」が、長崎支店では「長崎の未来が明るくなること」がやりがいとなりました。高松と長崎で仕事内容は全く違いますが、どちらも私が大事にする「やりがい」を十分すぎるほど感じることのできる業務であり、とても充実しています。
どんな仕事をするかも重要ですが、自分が大事にしている価値観を見定めて、そこに合致する企業選びができれば、予想外の部署に配属された時でも、前向きに充実した毎日が送れるはずです。そうした視点で選ばれた就職先が農林中央金庫なら、先輩として大変嬉しいですし、是非一緒に働きたいですね。