CORPORATE
佐藤 改
KAI SATO
IT統括部
2019年入庫/商学部卒
PROFILE
就職活動中、農林中央金庫とJAと異業種企業がコラボしたイベントに遭遇し、ビジネスマッチングによる事業の可能性の広がりを感じたことが志望の契機。入庫後は営業第四部で法人営業と系統貸出を担当し、食品業界再編の気運のなかで顧客メーカーや全農との資本提携契約等にも携わる。その後、福岡支店での勤務を経て、2024年よりIT統括部。システム関係の知識を補強すべく、外部ベンダーの育成プログラムも活用している。
農林中央金庫とJAグループが利用するシステムの企画・開発やリスク管理などを行っています。銀行業の根幹を為す預貯金や国内外融資、市場取引の決済管理にかかる大規模な基幹系システムの安全な運用管理はもちろんのこと、DX戦略に掲げるグループ全体での新たなビジネス価値の創造や生産性向上の実現に向けて、既存システムの刷新やデジタル人材育成にも重点的に取り組んでいます。
なかでも私の所属するシステムリスク管理班は、当庫が開発・導入・提供するシステムに内在しているリスクの分析・評価支援を行っています。近年は、国内外で大小さまざまなシステムリスクが発生しています。最近国内では基幹システム移行トラブルによる一部商品の出荷停止や、ランサムウェア被害による業務中断および個人情報の漏洩、世界的にはセキュリティ製品の不具合によるWindowsデバイスでの大規模障害が発生するなど、いずれも多数の関係者に影響を及ぼしました。また、足元では生成AIの技術進歩や浸透にともないサイバー攻撃が高度化しています。このような情勢の下、システムリスク管理班は当庫が開発・導入・提供するすべてのシステムについて、適切なセキュリティの確保をサポートしています。
主にシステムリスク評価支援として、システムユーザとともに情報システムの特性を踏まえたリスクの分析・コントロールの検討を行っています。また、日々急速に変化するサイバーセキュリティ情勢を適時適切に捕捉すべく、国内外の規制・インシデント動向について情報収集や分析を行うほか、必要に応じて法務・コンプライアンス部と協議し評価基準の見直しを実施しています。
具体的なリスク評価の手順としては、初めに情報セキュリティの3要素と呼ばれる機密性・完全性・可能性の観点から情報システムの重要度を見積り、導入目的や関連する業務内容、システム構成、運用形態をユーザと確認しつつ、想定されるリスクを洗い出します。そのうえで、リスクのコントロール策としてシステム構成や管理・運用の見直しなどを検討し、なお残存するリスクへの対応についてユーザと合意します。
たとえば業務効率化の一環で、これまでは紙で保管していた帳票類をデータに置き換えクラウドに保存する場合、外部から攻撃を受けて情報が漏洩する、クラウド上のデータが改ざんされる、クラウドサービスが停止してデータが利用不能となり業務が滞るなどといったリスクが生じます。
これらのリスクに対処するため、システム構成を図解しつつ、内在するリスクを特定し、金融機関として必要な対策を関係者とともに検討していく流れとなります。ユーザや彼らのニーズに寄り添うシステム設計・開発者が見落としがちな観点を補足し、トラブルの未然防止に努めています。
大型案件としては、JAバンクを支える「JASTEMシステム」の機器更改や、JA窓口手続のデジタル化により顧客利便性の向上および職員の事務効率化を実現する「営業店システム」の段階的な導入を実施中です。
ほかにも、当庫内の各部署からは「外部サービス上でお客様とチャットや書類のやりとりを行いたい」「バックオフィスの業務効率化ツールを新たに導入したい」などの相談が日常的に寄せられます。各相談の対応期日を踏まえた適切な優先順位付けや、可能な限り迅速なレスポンス、ユーザ目線に立ったリスク分析やコントロール方法の提示などを意識しています。
そのとおりです。システムリスク管理班の役割はあくまでもシステムリスクの評価支援であり、最終的なリスク対応の意思決定は主にユーザ側が行います。しかし、だからといって判断を放り投げてしまうのではなく、どのようなコントロール策ならばユーザ側が受け入れやすいかを考慮して提示しています。それによって後の協議が円滑に進みますし、予定より早くシステム導入が実現し、ユーザに感謝されることもあります。
今申し上げたとおり、安全なシステム導入の早期実現をサポートすることが現職でのモチベーションとなっています。そのためにも、ユーザとの協働体制をより強化していくことが今後の課題と感じています。
これは一般論ですが、システムのセキュリティ対策は「やらざるを得ないもの」という認識があると思います。安全性を優先した結果、計画していた仕様の一部を諦めざるを得ないケースもあるでしょう。そうしたイメージのせいか、当班への相談時に「お手柔らかに頼みます」と言う人もいます。
ですが、これは望ましい認識や関係性ではないと思います。この空気感を変えるためにも、ユーザの立場で思考し、システムの安全性とユーザビリティを両立できる方策をこちらから能動的に発信することを心がけています。こうした行動を通じて、ユーザや設計・開発者と我々リスクの評価者が、チームとしてより良いものを作っていくという目的意識のもとに協力し、結束できる雰囲気を根づかせていきたいと思うのです。
はい。自ら願い出て実現した異動です。以前は営業第四部と福岡支店で計5年間、食農ビジネスに従事していました。特に福岡支店では、不安定な経営に苦慮する肉牛肥育農家様を担当し、牧場に通い詰めながら、金融・非金融の当庫機能を活かしたさまざまな経営改善支援に取り組んでいたのですが、その一つである担い手コンサルティングを実施するなかで、経営体質の強化には生産現場のシステム化が必要だと実感しました。
ですが、長年農業に従事されてきた方々は、従来のやり方を変えることに不安を覚える場合が多いですし、見知らぬシステムやその専門家は信頼がおけないと感じてしまったりもする。そこを上手くつないでいくのが当庫の役割なのですが、私自身がシステムに疎ければ、提案に自信と説得力が欠けます。この課題意識が、IT統括部への異動を願い出るきっかけでした。
異動後の主な業務はシステムリスクの管理ですが、最新のITトレンドやシステムの設計・仕様への理解が求められる業務です。そうした意味では、「千本ノック」を受けるように、日々ユーザから多様な相談を受け、入念な調査と検討を繰り返すことにより、獲得したかったスキルが着実に養われてきたと感じます。
当面の目標は、今のシステムリスク管理班でユーザや開発側から一人前と認められるよう、知識の強化を図ること。その後はシステムの開発企画側に回ったり、「JAアクセラレータープログラム」への参画により外部のスタートアップ企業と連携し新たなビジネスモデル創出に携わったりといった経験を積み、IT統括部での学びを深めたいと思います。
そして、その先に目指しているのは、蓄えた知識や経験を生産現場に還元することです。以前担当していたフロントの営業はもちろん、さらに広い取組みとして、食農ビジネスの方向性を定める企画セクションで、生産者や企業に向けた施策の枠組みづくりを行うことで、わが国の農林水産業の成長を後押ししていきたいと展望しています。
魅力は色々ありますが、第一は少数精鋭であること。当庫はメガバンクなどに比べると職員数が少ないため、どの部署にどんな分野のエキスパートがいるかが見えやすい。そのため、業務で解決できないことがあった場合でも、専門知識を持った職員にアクセスしやすい特長があります。
当庫の職員は皆、当庫が農林水産業の発展に寄与する役割の組織であることを理解しているはずですから、部署や立場の違いを超えて快く協力してくれます。内部の統率の問題で、やりたかった仕事が滞る経験をしたことはありません。
さらに、若手の意見が尊重される文化もあります。未熟なうちから上司は常日頃、「佐藤さんならどうしたい? どうするのがいいと思う?」といった質問を投げかけてくれますし、こちら側も自発的に考えて発信し、行動に移せます。経験が不足する若手のうちは一人でできないのは当たり前なので、周囲の力を借りながらチャレンジしていけばいい。当庫は責任ある行動のうえに、欲すれば応えてくれる環境がある組織ですから、これから入庫される方にも是非期待していただきたいと思います。