農林水産業を取り巻く環境は時代に応じて変化しています。そのなかで農林中央金庫は金融業務を通じて、農林水産業の発展に貢献する唯一の民間金融機関として役割を果たし続けるために、ビジネスモデルを柔軟に変化させてきました。現在、そしてこれからの時代に向けて、私たちが担う役割として主軸に置くのは「食農ビジネス」「リテールビジネス」「投資ビジネス」の3つのビジネス領域と、それを支える「コーポレート」の仕事。これからの農林水産業の成長と発展に向けて、使命をもって取り組んでいます。
農林水産業の成長産業化や所得水準の向上、生産基盤の強化に向けて付加価値を創出・提供する食農ビジネスは、生産者を支援するだけでは実現できるものではありません。生産に用いられる機械・資材の製造から、農林水産物の加工・流通・外食・小売・輸出・消費まで、食農バリューチェーン全体を見渡して取り組むことが必要です。川上から川下まで広く取引を有する強みを活かし、全国の農林水産業者と1,700社にのぼる顧客企業の「架け橋」となって、生産者と企業との案件コーディネートを行い、所得向上やサステナブル課題対応、取引先企業が抱える事業課題の解決などにも結びつく質の高い事例の積上げに取り組んでいます。
食農ビジネスの深化との両輪で、農林中金グループの専門性を活かした役務提供や新たな商品分野を含む投融資拡大および金利・景気変動耐性を有する貸出ポートフォリオの構築に取り組み、食農法人営業本部の収益規模の拡大を目指しています。
全国各地のJAおよびJFは、独立した金融機関として、地域や組合員・利用者ごとに異なる金融ニーズにきめ細かに応えています。このリテールサービスをより効率的かつ効果的に提供するため、都道府県レベルではJA信農連・JF信漁連が、全国レベルでは当金庫が連携し、「JAバンク」・「JFマリンバンク」として一体的な事業運営を行っています。この仕組みを「JAバンクシステム」・「JFマリンバンクシステム」と呼んでいます。
このうち「JAバンク」では、農業融資などの生産活動をサポートする資金対応はもとより、就職・結婚・住宅購入・退職といったお客さまのライフイベントに基づいた適切な金融商品やサービスの提案、安定的な資産形成・資産運用などの提案にも取り組んでいます。後者の取組みを「ライフプランサポート」と総称し、貯金・決済・住宅ローンといった各種金融サービスに加えて、投資信託や遺言信託サービスを提供しています。更に、JAが運営する他の事業のサービス(指導・経済・共済など)も組み合わせて、多くの世代のお客さまに総合事業ならではのサービスを展開しています。
また、JAネットバンクやJAバンクアプリの機能を拡充するなど非対面チャネルを強化・拡充しています。加えて、渉外・専門人材を配置する「総合サービス店舗」、効率化を実現しながら利用者との接点を強化する「よりそいプラザ」など対面チャネルの再構築も進めています。
「JFマリンバンク」では、漁業専門金融機関としての知見を活かした資金対応のほか、ライフイベントに応じた生活ローン相談、事業承継相談などに対応することで、漁業と地域のくらしを支えています。
このようなJAバンク・JFマリンバンクにおいて、当金庫は全国機関としての役割を担っています。
JAバンク・JFマリンバンクの戦略や商品・サービスの企画を行うとともに、組合員・利用者のみなさまに対して“どのように商品・サービスを訴求していくか”をJA・JFとともに考え、ともに実践していく役割を担っています。総合的戦略として全国レベルで「JAバンク中期戦略(2025~2027年度)」、「JFマリンバンク中期戦略(2024~2026年度)」を定めており、これらをもとに都道府県あるいはJA・JFでそれぞれの戦略を検討・実践しています。
このほかにも全国のJA・JFなどが利用するデジタルインフラや統一的な事務手続等も提供しています。決済ネットワークの提供から法令・制度等への対応として様々な取りまとめも行っています。
また、個々のJA・JFが抱える課題はその地域や組織の状況によって様々です。まずはJA・JFの自主性を尊重しつつ、足元では個々の組織がとるべき経営戦略の明確化を促し、後押しする取組みを実践しています。また、JAバンクシステム・JFマリンバンクシステムの安定性と健全性を確保していくため、「JAバンク基本方針」・「JFマリンバンク基本方針」のもと、当金庫は個々のJA・JF等に対して必要な経営指導や支援等を行っています。
JAバンク・JFマリンバンクの資金を最終的に運用する役割を担っているのが、私たち農林中央金庫です。そのため、投資ビジネスでは中長期的に安定した収益を確保し、運用益を会員に還元し続けていくことを究極の目的として、スケールメリットを活かした効率的な運用を行っています。
この目的の実現を目指し、日本が低金利時代に入った25年ほど前から、グローバルな金融市場を舞台として、いち早く「国際分散投資」に取り組んできました。現地法人を含めた海外の各拠点を活用し、グローバルなネットワークを構築しています。豊富に得られる情報を精査したうえで活かし、限られた市場・資産に集中投資するのではなく、リスク・リターン特性の異なる幅広い市場・資産に分散投資することにより、ポートフォリオ(運用資産)全体のリスクを抑制しています。私たちは、中長期的な収益の安定化を極限まで追求するため、投資手法やリスクマネジメントについて不断の見直しを行い、国際分散投資の高度化に挑戦し続けています。
また、投資ビジネスでは、サステナブル・ファイナンスにも取り組んでいます。たとえば、自然災害に対するリスクマネジメントを重要なテーマとする債券への投資などを積極的に行うことにより、持続可能な環境・社会や農林水産業の発展を投資の面から後押ししています。
農林中央金庫が価値を生み出す3つのビジネスを展開するために不可欠な基盤となっているのがコーポレートです。事務・IT、リスク管理、リーガル、財務会計、監査、経営管理という機能を担うなかで、経営環境の変化にもアンテナを張りめぐらせ、さまざまな対応を進めています。
コーポレートの主要な取組みとしては、人的資本価値向上に向けた取組みや、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進に向けた取組み、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組みなどがあげられます。
2019年5月にJAグループの関係団体と開設したAgVenture Lab(アグベンチャーラボ)では、スタートアップ企業との連携強化を目的とするJAアクセラレータープログラムや農林中央金庫・系統組織向けイベント・情報発信などを実施し、ITデジタルの積極活用による新たな価値創造に挑戦してきました。
一方、農林中金グループ全体においては、こうした動きが一部の部門や業務に止まっていたことから、グループ全体における拡充や、持続的な期待効果の発現、更には農林中金グループが保有するデータの利活用など、新たなビジネス価値の創造と生産性向上の実現に向けた取組みを強化しています。
こうした取組みを引き続き強化していくために、農林中央金庫では、以下のDX戦略を定めています。
農林中金の事業
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